私は天使なんかじゃない








星空の覇者





  最初は仲間たちに距離を置いていた。
  しかしいつの間にか距離は信頼へと変わってた。






  「ここは任せるでござるっ!」
  ばっさぱっさと追撃してくるエイリアンたちを斬り伏せる侍トシロー・カゴ。
  魔剣サムライブレードだ。
  すげぇ。
  「あたしらに任せていきなっ!」
  マリアさんもそれに呼応するように重火器で応戦。
  一本道の通路での戦い。
  追撃は2人に任せるとしよう。
  「行きましょうっ!」
  「あいよ、保安官っ!」
  敵の攻勢は熾烈を極める。
  意外に意外だ。
  まだこれだけの勢いを残していたとは。
  だけど戦いには流れというものがある、その流れは今のところ私たちに乗っている。負けるものかっ!
  私、ポールソン、ターコリエン、エンジェル、ソマー、Mr.クラブはそれぞれ手に武器を持ち、大量の弾丸を浴びせながら向かってくる敵たちを蹴散らしていく。
  負けるものかーっ!

  タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ。

  走る。
  走る。
  走る。
  敵の攻勢がなくなった、扉が近くなる。お先にと言ってソマーが走り抜けた。なかなか足が速い。扉が開く、そこにはマントを纏ったエイリアンがいた。
  あいつがボスか。
  この船のキャプテンって言ったところか。
  私たちは銃を乱射する。
  キリキリと舞うようにキャプテン・エイリアンは銃弾を浴び、そしてその場に転がった。
  ……。
  ……あ、あれ?
  戦いはこれからだっ!って展開ではないの?
  えっ?
  えっ?
  えっ?
  死んだの、マジでっ!
  バリア展開したり超能力とかエイリアンの超兵器とか、そんなのないのかよっ!
  人違い、いや、エイリアン違いかも。
  「サリー、こいつ?」
  「うん、こいつがボス」
  マジですか。
  変身したりはしないのだろうかしないですよねー。
  戦いオワタ。
  まあ、楽でいいんですけど。
  「復讐の完了って、こんなもんか? 何というか、呆気ないというか……」
  独語するポールソン。
  内心ではこんなもんだろうなとは思ってる。
  ドラマチックには終わらないものなのだ。
  だけど、これはあっさりし過ぎだろー。
  「制圧完了ってね。で? ミスティ、どうするのさ?」
  「そうね……」
  モニターがある。
  大きなモニター。
  そこには地球が映っている。画面下の方に。地球は青かった、というけど、今の地球は茶色い。随分と荒廃したものだ。
  「……あー……」
  半ば呆然と呟いたのはターコリエン。
  灰色の地球を見た感想だろう。
  でしょうね。
  仕方ない。
  私とソマーとエンジェルは戦後世代で地球がどうなったか、世界がどうなったか知っている。ポールソンとMr.クラブはそもそも地球を見たことがない、サリーは多分何度か見たことが
  あるのだろう、脱走してたし。だから見慣れているのだろう、特に反応がない。ダイレクトにダメージかあるのはターコリエンだけ。
  居残るのかもな、彼。
  モニターを食い入るように見る一同、だけど私は別のことに注目していた。
  何だこれ?
  ブリッジの中央付近に床から何か伸びている。マイク、いや、違うか、トリガー付きの銃みたいなものがある。
  
  ビリビリビリ。

  船内が唐突に揺れる。
  モニターが真っ暗になった。
  いや、違うっ!
  「どこから来たのよ、あれっ!」
  ソマーが叫んだ。
  そう。
  どこからともかく、いきなり敵の大型母船が現れた。モニターが一瞬映らなかったのはこいつをドアップで捉えたからだろう。
  一難去ってまた一難。
  エイリアン蹴散らして勝ったと思ったら今度は母艦ごときやがった。
  「ま、まさか撃ってこないよな」
  「ええ。平和主義者だろうし」
  皮肉です。
  皮肉ですとも。
  今度は母艦同士の戦いってわけだ。
  向こうは撃ってくるだろう、そして私たちも当然撃つ、撃つしかない。向こうにも人間が囚われているんだろうけど、撃つしかないのだ。
  「総員戦闘配置っ!」
  サリーの言葉で全員が計器の前に移動する。
  分かるのかって?
  雰囲気要員です。
  何かカタカタと計器を弄っているサリーは分かっているんだろうけども。
  スーパー幼児、さすがです。
  さて私はどうしたもんか。
  「ミスティは砲手をお願いっ!」
  目立つ役割だ。
  砲手、ね。
  これがそうなんだろう。
  ブリッジ中央にあるトリガーを握る。そのトリガーには何かのスイッチがある。3つある。
  「何、これ」
  自爆装置ではないだろう。
  スイッチには何かが書かれているけどその何かが私には読めない。
  ええい、ままよ。
  左のボタンを押す。
  キュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンと振動音。
  「何だ、これ」
  「デス・レイでの攻撃は出力25%、50%、75%から選べるよ。今選んだのは25%だね。攻撃に25%のエネルギーが充填されたよ。この船のエネルギーは無限大、でも再充填には時間かかるからね」
  「デス・レイ?」
  「前に撃ってるところを別の場所の窓から見たことがあるんだ、この宇宙船の主砲の、レーザー砲。デス・レイっていうのは今付けたの。格好良いでしょ?」
  「それはそれは」
  「防御のシールドは攻撃に回さなかった分が自動で回されるの」
  「ふぅん」
  つまり攻撃25なら、防御は75か。
  わざわざサリーは%と言ったんだ、マックス出力は100%と思っていいだろう。
  「でも攻撃100は出来ないからね」
  「何で?」
  「さあ。地球の言語にすると……んー、分からないなー……システム的なものだと思えばいいと思うよ。あと、攻撃しないと防御は発生しないから。ほら、撃ってっ! ロックオンは自動でできるからね」
  敵の攻撃が来る。
  25%でデスレイ・発射っ!

  ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!

  こちらの攻撃は敵母船に届かない、そして敵母船の攻撃も。
  向こうのデス・レイの方が太い。
  となると敵は少なくとも50%で撃っているのか。もしくは75%か。となると破るにはこちらも75%で撃つ必要がある、向こうの攻撃を防御して、そして敵の次の攻撃よりも早くに。
  何となく分かったぞ、このシステム。
  だからこそ現状では手がないのが分かった。
  こちらと向こうのシステムが同じであれば、先に攻撃してきた向こうに分があるってわけだ。向こうの攻撃を防御し、敵が次に攻撃する前に、つまりは防御が展開される前に攻撃しないと
  相手を鎮めることが出来ない。でも再充填に要する時間が同じてあるのであれば、展開は一進一退、負けないけど勝てない、終わらない。
  向こうもそれが分かっているのだろう。
  デス・レイは牽制程度でしかない。少なくともそれで終わるとは向こうも思ってない。
  「せ、迫ってないかい、エンジェル?」
  「気の所為でしょ」
  違う。
  ソマー正しい。
  わずかにだけど敵母船は迫ってる。
  「ああ、そういうことか」
  私は理解した。
  取り付いて兵隊をこの船に送り込んでくるつもりなのだ。
  撃ち合いは相手がよっぽどへまをしない限り永遠に終わらない、だからこっちの船に突りいて兵力送り込もうとしているのか。物量で押されたら勝ち目がない。
  何とか攻撃のリズムを狂わせて、攻守を逆転させなきゃ。
  取り付かれたら物量でさすがに負ける。
  向こうの母船はロボット兵器工場は無傷で存在してるだろう。
  私たちが勝ってたのはロボットを前面に出してくる前に沈黙させたからで、まともにぶつかればさすがに負ける。
  でも今は攻撃するだけだ。
  デス・レイ発射。
  互いに攻撃は防御される。
  「サリー、これ終わらなくない?」
  「かもね」
  「にしてもサリー、読めるなんてすごいわね」
  「えへへ」
  「えへへ、で済む話題じゃないでしょ」
  持久戦だ。
  持久戦において重要なのは焦らないこと、機会を見逃さないこと、それだけだ。
  見極めよう。
  慎重に、そして大胆に。
  その時……。

  「開けて欲しいでござるっ! 拙者、エイリアンではござらんっ!」

  「侍さんだ、入れてあげようっ!」
  サリーが扉のロックを端末で解除するとトシロー・カゴとマリアさんがなだれ込んでくる。あー、何かMr.サムソンがいる。忘れてた。
  息も絶え絶えな感じで壁にもたれ掛って座った。
  生きていたらしい。
  まずはよかった。
  「そいつは拾ったんだよ、仲間……なんだろ?」
  「ええ」
  「エ、エンジンコアにいたはず……な、なあ、何かあったのか?」
  「それは後で話しましょう、ターコリエン」
  サリーが扉をロック。
  ドンドンと音がした。
  なるほど。
  エイリアンたちの追撃か。
  「マリアさん、外はどんな感じ?」
  「どこぞの軍隊がエイリアンを蹴散らしてるけど、ここに来るにはまだかかる」
  大尉の部隊か。
  パターソン大尉。私自身は会ってないけど、ターコリエンは彼がいるのを知って勝った!とか言っちゃうぐらいだから、用兵に長けているのだろう。とはいえこの状況ではたぶん役に立たない。
  母船対母船の戦いだ。
  対抗策はデス・レイしかない。

  ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!

  25%攻撃を続ける。
  相手の防御に阻まれるけど、相手の反撃も攻撃に回さなかった分の75%のエネルギーが自動で防御に回されているので、敵の攻撃は届かない。
  それを何度も繰り返す。
  「なかなか上手い手じゃないか、感心したよ」
  「どうも、マリアさん」
  同じ戦法を繰り返す。
  敵さんは時折こちらのカウンターを警戒して攻撃50防御50でやっているけど私は一貫して攻撃25防御75で対応している。
  「リズムは掴めたかい?」
  「大体は」
  「やるときは言って。気分盛り上げて観戦したいからね」
  「あははは、花火じゃないですよ」
  「花火みたいなものだよ」
  「あははは」
  相手を鎮めるには75%攻撃するしかないのだ、じゃないと敵の防御は貫通しない。
  今までの感じで敵は攻撃を50以下にしたことはない。
  相手もこちらの状況を読もうとはしているだろうけどリスクは特にない。攻撃75を、向こうが防御75で相殺してもお互いにダメージはないわけで。

  ばぁんっ!

  銃声。
  振り返る。暴発ってわけではないようだ。銃声はさらにする。
  「クソチビども、どこから来やがったっ!」
  「対応してっ!」
  「あいよっ!」
  敵がジャンプしてきやがった。
  幸い数はさほどではない、今のところは。何とか仲間たちで、私とサリー以外で対応してくだされ。
  敵母艦からの指示なのか、それとは別に奪回しようとしているのか。
  いずれにしても面倒なことだ。
  銃声は怒号は断続的に続く。すぐ後ろで、すぐ近くでの戦いだけど、気は散るし意識が向こうに行くけど、私は砲手に徹しないと。デス・レイとシールド、攻守が連動している以上、気は抜けない。
  敵の攻撃の後にすぐ攻撃しないと、そもそもシールドが展開しないわけだし。
  その場合25の攻撃でも船は沈む。
  「サリー」
  「何?」
  「無茶苦茶言うけど、サリー、再充填のテンポは早められる?」
  相手が撃つ前にこちらが75%攻撃をする。
  それが最善。
  そしてそのリズムは掴んだ。
  「サリー、向こうの攻撃よりも早く充填したい」
  「やったよ」
  「はっ?」
  「そう言うと思ってやっといたよ、今終わった。システムを直結させたから向こうよりも12秒早く充填できるよ」
  「さっすがキャプテン・コスモスの相棒」
  「えへへ」
  撃つのはこちらが早い。食らえフルパワーっ!
  行けるっ!
  「発射っ!」

  ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!

  発射されるデス・レイ、だがそれは敵母船には当たらない。
  そりゃそうだろう。
  それは地球に降り注いだのだから。
  「ちょっ!」
  「どこ撃ってんのよっ! 馬鹿かあんたはっ!」
  「私じゃないっ!」
  罵るソマーに叫び返す。
  当然だ。
  私がわざわざ地球に撃つわけないし、この絶好の機会を逃すはず……いや、そもそも撃たないから、地球にはっ!
  操作慣れしていないのは否めない。
  だけど、今の今まで撃ってていきなり間違えるか?
  どういうことだ?
  どういうことだっ!
  「誰が撃ったのっ! えっ、私じゃないよね?」
  「違う別の場所からだよ、船内だけど、誰かは分からないっ!」
  「マジか」
  「マジっ!」
  まずい。
  まずいですよ、これは。
  「お、おい、ミスティ、もしかして、これって向こうの方が攻撃早くないか?」
  「みたいねターコリエン。サリー、再充填にかかる時間は?」
  「約1分っ! でも向こうの攻撃は25秒後に来るよっ! 現在シールド消失中っ! 誰が地球に全力で撃ったのよーっ!」
  「くそ」
  誰だ?
  誰がこの状況で地球に撃ったんだ?
  完全に詰みだ。
  この状況でどうにかできるわけがない。
  私の旅はここで終わりか?
  私の……。
  「攻撃、来るよっ!」
  相手母船から撃ちだされるデス・レイ。
  でかい。
  これではもう手がない。
  この時点でこちらが攻撃出来る状態でも勝てない、お互いに相打ちになるだけ。
  そしてこっちはパワー充填中で攻撃出来ないわけだから相打ちにも持ち込めない、完全に詰みの状態ですな。
  終わったな。
  そしてデス・レイの閃光はモニターを覆い……。

  ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!

  「えっ?」
  デス・レイは、届かない。
  どういうことだ?
  モニターは閃光だけが支配しているけど、それだけだ。当然到達しているはずなのに、攻撃が来ない。
  「サリー?」
  「な、何もしてないよ?」
  何だこれは?
  何らかの、私たちが知らない自動防御システムか何かか?
  再充填が終わった?
  「勝手に終わる顔されても困るんだけどね」
  「フィ、フィーさん?」
  「ハイ」
  不敵な笑みを浮かべるフィーさんがいた。
  両手をモニターに向けている。
  首筋を撃たれて別れったきりの再登場。
  「薬が効いたんですか?」
  「薬?」
  改造型のジェルを渡した。直後に私がエイリアンに拉致られた牢獄行きにされたけど。
  「ごめん指がピリピリしたから腐ってるのかと思って捨てた。刺激臭が凄かったし。毒かと思った」
  「あ、あはは」
  魔法で治ったらしい。
  魔法?
  魔法です。
  手がピリピリか、そういえばエンジンコアで死んでた兵士2人の首にも何か塗ってあったな、それもピリピリした。刺激臭も。
  「師匠っ!」
  「待たせたわね、トシロー。皆を護ってくれたようで何より」
  「有り難きお言葉っ!」
  「それでミスティ、どんな状況?」
  「ま、まさか、魔法ってやつで受け止めているんですか?」
  「こんなの受け止めれるわけない。私じゃ無理ね、たぶんハンぞぅ、いやアークメイジでも無理。普通にシロディール吹っ飛ぶほどの威力よ、これ」
  「じゃあ、どうやって……」
  「限界までブーストして受け流してる。受け止めれないなら受け流すしかないってわけ。その点のコントロールは出来る。ただ、この場所を護っているだけだからね。そして受け止めているわけ
  でもない。流しそこなった余波までは責任持てないから、そこのところはよろしく」
  「きゃっ!」
  直後に振動。
  なるほど。
  ブリッジを護っているだけで船体の別の部分には受け流し損なったエネルギーがぶつかっているわけだ。
  「早くしてね、私でもあと10数秒が限界だから」
  「サリー、再充填はっ!」
  「残り15秒っ!」

  ドゥゥゥゥゥゥン。

  「せ、船体にダメージがあるぞっ!」
  「どうにもならないから黙っててターコリエンっ!」
  「保安官、どうする、別の場所で撃った奴探すか?」
  「いいえポールソン、祈ってて、ここで私たちの勝ちをっ! エンジェル、デス・レイの操作をここに限定に出来る、というかしてっ! 誰だか知らないけどもう邪魔されたくないっ!」
  「分かった」
  「……やばい、意識が飛びそう」
  「フィーさん頑張ってっ!」
  「気軽に言うわねー、気に入った」
  「どうもっ!」
  まだかまだかまだかーっ!
  本当にこれがラストチャンスだっ!
  もう後がない。
  もう後が……。
  「ミスティっ!」
  「いっけぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

  
ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!

  音だけがした。
  モニターは向こうの攻撃で閃光映らなかった、だからこちらが撃ったデス・レイの結果が分からない。
  どうなった?
  次第にモニターが回復していく。
  映ったのは……。
  「お、おいおい、どうなった、撃ちもらしたのか?」
  虚ろなMr.クラブの言葉。
  誰も答えない。
  モニターの先には敵母船がいまだ健在だったからだ。
  私は微笑する。
  見える。
  そう、見えるのだ。
  母船中央から星空が。
  貫通した、こちらのデス・レイが相手母船のど真ん中を。
  次第に爆発していく敵母船。

  
ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!

  「うおっ!」
  敵母船からの攻撃。
  身を乗り出してみていたポールソンが腰を抜かした。誰かが笑うと彼はふてくされた様にそっぽを向く。
  敵の攻撃はこちらに届かない。
  それにしてもか細い攻撃だ。無駄なあがきで撃っているのか、システムが暴走して闇雲に撃っているのか、謎ではあるけど問題はない。あの船は沈む、小爆発を繰り返し次第に下降していく。
  地球の重力に捕まったようだ。
  今のあの母船の出力では抵抗できないのだろう、爆発を繰り返しながら大気圏へと突入しつつある。
  「サリー、あの船はどうなるの?」
  「計算したよ。残骸は大気圏突入時に燃え尽きるから、問題なし」
  「さっすがキャプテン・コスモスの参謀ね」
  「えへへ」
  敵の母船は沈む。
  今更ながらこの船内での抵抗が既にないことに気付く。ブリッジへのアタックもしばらく前からなくなっている。
  エイリアンの戦力は分からない。
  まだ母船級の戦力があるのかもしれないけど、私たちは勝った。拿捕し、撃沈し、少なくとも母船2つは敵の戦力から消えた。
  これは勝ちだ。
  人類は明確な抵抗を宇宙人に示した。
  これは勝ちだっ!
  「フィーさん、やりましたねっ! ……あれ?」
  いない。
  いなくなってる。
  「師匠は、消えたでござるよ」
  「消えた?」
  「敵の城を討ち取った瞬間に、消えたでござる。まさに神の化身だったのかも、知れませんな」
  「そう、ね」
  お礼も言えなかった。
  消えた原因?
  さあ?
  だけど、そんなの何だっていい。私達だって大概ありえない展開をしているんだ、魔法が本当に会ったって問題ないだろ。
  信じたいな、いつかまた会えると。
  私は大破する母船を見ながらそう思った。
  「終わったね、ミスティ」
  「ええ」
  「それで、ミスティはどうするの?」
  「帰るわ、地球に。帰る手段は、あるのよね、サリー?」
  「うん」
  「よかった。場所をパパがいる場所に指定したいところだけど、まあ、分からないから、最初の場所に帰りたい。スプリングベールの残骸。あそこをスタート地点にしないと探索が行き詰りそうだし。サリーは?」
  「残る。妹見つけないといけないし、それに」
  「それに?」
  「地球防衛軍には有能な参謀がいないといけないしね。キャプテン・コスモス、ここは任せて。地球は絶対に護るから」
  「そっか」
  仕方ない。
  仕方ないのかもしれない。
  地球は既に彼女の時代ではないのだ。私はまだキャピタルすら探検していないけど文明は滅んでいるのは確か。むしろここにいた方が平和に暮らせるだろう。物資はあるし。
  仲間たちの意見はいろいろあるだろう。
  帰る者。
  残る者。
  人の道はそれぞれだ。
  「ちょっと待ちな」
  「マリアさん」
  「あんたとの付き合いは短かったが、これは言わせておくれ。やばくなったら逃げな、それが生き残る方法ってやつだよ。どんな時でも通用する、方法さ」
  「ありがとうございます」
  人の道はそれぞれ。
  そしてわたしは星空の世界から廃墟の世界へと帰って行った。






  風が吹く。
  その風は頬を撫で私は目を開いた。
  「……?」
  視界の先には星空。
  綺麗とも言い難い床の上に私は寝転がっている。
  無数の流星が見える。
  大きいな。
  それにしてもここはどこだ?
  ああ、ここはスプリングベールの廃墟。私は屋根のない、露天の建物の残骸の中で寝ているんだった。
  少し身を起こし、手元に置いてある10oピストルを取る。
  ……。
  ……特に警戒すべきものは、ないか。
  何か夢見てたな。
  宇宙人と戦う夢。
  何歳だ、私は。
  それにしてもやたらとリアルで、まるで本当に戦ったかのように体がだるい。
  でも夢は夢だ。
  視界の端にダッフルバックに気付く。あんなの最初来た時あったっけ?
  少なくとも私の荷物ではない。
  あー、夢で武器を大量に持って帰ったら今後が楽ねとか言って持ってきたような。でも夢は夢だ、開けて見ようとも思うけど……いやいやいや、どんな夢見がちな子だよ、私は。苦笑した。
  「パワーアーマー持ってくればよかった、なんてね」
  ボルト101のジャンプスーツでは防御力には心許ない。
  あれがあればチートだったのになぁ。
  夢ですけどね。
  10oスピストルを置き、私は再びその場に転んだ。
  ボルト101での喧騒で疲れているんだ。寝よう。
  寝るとしよう。


  本編終末の世界へと続く。
  ……と思いきや……。



  スプリングベールの廃墟。深夜。
  完全に寝入っているミスティの側にいつの間にか杖を持った老人が立っていた。
  老人は呟く。
  「悪いが助っ人希望なのでな、ちょっとの間未来まで来てもらおうかのぅ。一応駄賃として一時的に44マグナムっちゅうもんを使わせてやるから勘弁じゃぞ。すぐに恩人のフィーちゃんとやらに
  合わせてやるわけじゃから感謝して欲しいものじゃな。爺ちゃんにチューしてくれたらおっけぇじゃ☆」
  「……ZZZ……」
  受難は続く。


  狂気の魔王シェオゴラスからの援軍要請により未来のダンウィッチビルに飛ばされることに。
  本編終末の世界だけではなく外伝Festivalにも続く。












  ※注意

  最初は仲間たちに距離を置いていた。
  しかしいつの間にか距離は信頼へと変わってた。

  これに関してはオリジナルではなく。
  何かで見たんです。
  何かで。
  だけど検索しても出てこなかったので使ったわけですけど、何か分かる人はご一報くだされ。気になる。原文のままではなくうろ覚えなのであれなのですが。

  久遠。